それでも人は生きていかなければならない

  1. Family


今日は朝から雪が降っていた。そして今も、はらはらと雪が降っている。


今年のように、こんなに長い時間、雪を眺めて過ごしたことはなかったと思う。旭川生まれの根っからの道産子だけれど、雪はいつも家の外にあり、私の暮らしの中にはなかった。


東川2M houseに来て、雪はとても親しいものになった。特に夜ライトアップされた桜の木を背景に、白く細かいものが舞い始めると、じっとそれを見ずにはいられない。ときには雪を見ながらいつの間にか眠ってしまうこともある。


2021年という年を、できることなら私の人生から消してしまいたいと思う。


至誠が今ここにいないという現実を、私はどうしても受け入れることができない。だから思いっきり泣くこともできない。泣ければ楽になるのだろうか。


今年、私はたくさんのブログを書いた。そのほとんどは至誠との時間の中で生まれた。


多くの方が、たくさんの人が私の文章に共感を持ったと思う、とおっしゃってくださる。私が発信したことが、どこかで誰かの思いに通じるのならば、それは望外の幸せだ。けれど、私をそのためにブログを書いていたわけではない。それは決して目的ではなかった。
私はただ書かずにいられなかったし、小石至誠というひとりの人間の生き様を伝えずにいられなかっただけだ。


はらはらと雪が降っている。なぜ私はここにいるのだろうと思う。


至誠は私の心の中にいる。私はたちはいつも一緒にいる。そのことを疑ったことはない。それでも実態がないというこの悲しみは尽きることがない。


明日になればまた日が昇り、自然は優しく微笑むだろう。日々の暮らしは静かに流れていく。時間が戻ることはもう二度とない。


絶望しても、苦しくても、抜け殻であっても、それでも人は生きていかなければならない。


ただ、至誠への想いだけを抱きしめて、私は新しい年に足を踏み入れる。

2021年12月31日の夕景。

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