「みんなに助けられながら生きてきた」ーー95歳テイ子おばちゃんの生き方

  1. Family

今年になって初めて、テイ子おばちゃんと会いました。コロナで施設内での面会ができないため、車で外出し、2人でお寿司を食べ、北彩都のスタバに行ってお茶をしました。


東川に住むようになって、月に1回、旭川市内の施設にいるテイ子おばちゃんに会いに行っています。テイ子おばちゃんは、旭川の祖母の弟のお嫁さん。母にとっての叔母で、私にとっては大叔母というのが正確な言い方でしょうか。


テイ子おばちゃんはすでに両親が他界している私にとって、母や父、祖母の話ができる数少ない人なのです。

30年先輩のテイ子おばちゃんと、
北彩都のスターバックスにて。


私が生まれた時からですから、テイ子おばちゃんとは、もう60年以上の関係です。旭川の祖母ととても仲が良く、母も私とてもお世話になりました。


20年ほど前に大叔父が亡くなってからは一軒家からマンションに移り、ひとり暮らしをしていましたが、5年ほど前に養護付き老人ホームに入りました。外出しても、杖はついているものの、95歳とは思えないほどしっかりと自分の脚で歩くことができ、頭脳明晰。ユーモアのセンスもあって、いつも私を笑わせてくれます。


毎月会って、折々の話を聞くうちに、テイ子おばちゃんの人生が見えてきました。


ずっとテイ子おばちゃん、と呼んできましたが、本名は「捨子(すてこ)」と書きます。「小さい時は、この名前がとても嫌だった」とのこと。テイ子おばちゃんが生まれて、母親は産後の日だちが悪く14日目に亡くなりました。それまで何度も子供が小さいうちに亡くなっていたため、ご老人の助言で丈夫に育つようにと、敢えて「捨子」名付けたのだそうです。


テイ子おばちゃんには、父親の前妻の娘である18歳歳年上の姉が1人いました。お姉さんが母親代わりとなって、結婚もせずに、テイ子おばちゃんを育ててくれたそうです。「姉はとても頭がいい人でね。級長もしたし、北電にも勤めていてお嫁さんに来て欲しいっていう人もたくさんいたんだよ。私のために犠牲になって」とテイ子おばちゃんは、今でもお姉さんにすまないと言います。


テイ子おばちゃんの実家は果物屋でした。「入沢果物店といってね。平和通りから角を曲がると、一軒目がお菓子屋さん、2軒目がお寿司屋さん、3軒目お蕎麦屋さんでその隣が家。その向こう隣は映画館が3軒並んでいたんだよ」テイ子おばちゃんは、町娘=シティガール、だったのね!


42歳で、2人の奥さんに先立たれた父親は、3人めの後添いを望まず、娘2人と暮らしながら果物屋を営んでいました。「父は静かで優しい人でね。口数は多くないんだけれど、ちょっと面白いことを言ったりして。近所の人たちがりんごを買いに来て、2時間も3時間も奥の茶の間でお茶を飲んでいく。それを決して嫌がらない父親だったよ」

そんな家に育ったテイ子おばちゃんは、誰に対してもニコニコと優しく、そしていつも明るい人でした。祖母の弟である大叔父との出会いは、大叔父の兄が職場の同僚だったこと。娘2人で、中でもテイ子おばちゃんを溺愛していた父親は、婿養子を取るつもりだったようで、結婚には大反対だったそうです。


そんな父親を説得しきれず、半ば駆け落ちのようにして所帯を持った大叔父とテイ子おばちゃん。戦争から戻ってきて運転手をしていた大叔父は頑張り屋で男気のある人。後にはタクシー会車の取締役にもなり、テイ子おばちゃんの父親からも「あの人と結婚してよかった」と言ってもらったそうです。


テイ子おばちゃんには息子がひとりいて、札幌に住んでいます。先週も会いにきてくれたとのこと。


会うたびに「私、幸せだね」と繰り返すテイ子おばちゃん。「みんなに助けられながら生きてきた。ありがとう、ありがとうだよ」と。
決して愚痴をこぼさず、いつも感謝を忘れず、人に対しては優しくニコニコと笑顔を見せる。決して、簡単なことではないと思います。


「私は店屋の娘だからね。誰に対しても、愛想良く、と躾けられたのよ」というけれど。。。
テイ子おばちゃんに会うたびに、「私こそありがとうだよ」と繰り返しています。


テイ子おばちゃんは人生の先輩として、「感謝して生きる」ということを教えてくれた人。

テイ子おばちゃん、1日も長く、元気でいてね。

一緒に外出すると伝えたら、
オシャレをして待っていてくれたテイ子おばちゃん。
オパールの指輪は何十年も前に、
旭川の宝飾店のウィンドウで見つけて、
大叔父のボーナスを待って購入したいう
思い出の品。

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