至誠の言葉。「その時間があったことに感謝しよう」

  1. Family

旭岳がきれいに見える日。北の住まい設計社のカフェでひとり、ランチをしていました。
2年前の夏、至誠と座った席でした。
食後のコーヒーカップも、あの日と同じアラビアのもの。
正面の席に、至誠が座っている姿が見えます。

北の住まい設計社のカフェで。

こんな何気ないランチやお茶の時間を、私たちはたくさんたくさん持ちました。

週末の散歩は、いつもランチやお茶がセットでしたし、どんな時も「お茶しようよ」と私が言うと、いつも「いいよ」と言ってくれた至誠でした。

美術館にもよく一緒に行きました。都合がつく時は、どんな時も私に付き合ってくれました。

今、それがどれほど貴重な時間だったかわかります。

カフェに白髪の初老のご夫妻が入ってきました。コーヒーとデザートを頼み、向き合って座っていらっしゃいます。言葉の数は多くなくても、温かな雰囲気が感じられます。


ふと、至誠と私はもうこんな時間を持つことはないのだな、と思うと、涙が溢れてきました。


東京で、いつものスーパーでの買い物の帰り道。
買い物の時は、リュックに重いものを入れ、両手に荷物を持ってくれた至誠。自分の手に、ずっしりとした重さを感じる時、もうこの荷物を持ってくれる至誠はいないのだ、と実感せずにはいられません。

重い荷物はいつもこのリュックに入れて
持ってくれた。


ジェノベーゼのパスタを作る時、ベランダのバジルを収穫するのは至誠の役目でした。ハサミで一つ一つ丁寧に、枝から葉を切り離し、山盛りのバジルを摘んでくれました。緑鮮やかな出来立てのジェノベーゼをひと口食べた時の「美味しい!」という至誠の声。ジェノベーゼを作るたびに蘇ってきます。


暮らしはひとつひとつ、具体的なことの積み重ねです。そして、人が本当の悲しみを覚えるのは、そんな具体的なことを通してなのです。


父が少しずつ弱っていき、もう一緒に桜を見に行くことも、食事に行くこともできないのだと泣いた時、至誠が言ってくれた言葉があります。


「その時間があったことに感謝しようよ」。


そうだね、至誠。
今、私は1日に何度も涙ぐんでしまうけれど、それは至誠とたくさんの時間を共有したことの証なんだね。至誠と過ごしたその時間は、決して消えないのだから。

東川では稲刈りが始まりました。家の周りの黄金色の田んぼも数日で見納めです。

東川2M houseの周りの田んぼは
見惚れるほど黄金色。


iPhoneから送信

関連記事

入院

昨日の外来受診で軽度の肺炎であることが発覚。入院することに。もう一年半以上、入退院を繰り返しているので、家人は入院を嫌がったが、今のうちに集中的に治療をという医…

  • 1850 view

ずっと私を支えてくれた

昨日、至誠のお姉さん2人が岐阜から来てくれました。夜でしたが、3人で至誠に会うことができました。至誠はすやすやと寝ていましたが、お姉さんたちの呼びかけに、目をぎ…

  • 6173 view

至誠と共にーー1分でも長く、笑顔でいよう

朝6時。病院からの電話で目覚めました。すぐにタクシーで病院へ。不整脈が多く、血圧も測定不能なほど下がったとのことでしたが、私が着いた時には、少し落ち着いていまし…

  • 4976 view

至誠と、東川にて。

至誠が逝って1週間後。私は至誠と東川の家につきました。一緒に行こうね、と日々言い交わした東川2M house。それを楽しみに頑張っていた至誠を思うと、涙が溢れて…

  • 3517 view

蜜蝋のキャンドルーー至誠の月命日

今日は、昨年の10月26日に亡くなった至誠の月命日です。日の出と共に起きて、ストーブを焚き、蜜蝋のキャンドルをつけました。北の住まい設計社で、友人が買っ…

  • 988 view

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。