時を刻む「針仕事」ーー病室のポシェット

  1. Family

病室で必要なものは、実際に入院してみて初めてわかるものです。今回は2回めということで、万全を期したつもりだったのですが、やっぱり忘れ物をしました。それはポシェット。

ほぼずっと点滴による治療。その間、心電図も装着しています。それを入れておくために、斜めがけのポシェトがいるのです。病院が用意してくれたポシェトはあったのですが、なんと花柄。? 多分、ボランティァの方が作ってくださったのでしょう。

なんとも家人には不似合いで。(ここでも笑いを誘ってくれました)

手元にあった麻のナプキンで手作りしました。簡単なKの刺繍も入れて、2時間くらいで出来上がり。色はいつも着ている、ブルー系のパジャマに合わせて。

麻のナプキンをたたんで縫い合わせただけ、の簡単ポシェット。

入院する前には、家人のベストの取れかかったワッペンを付けてあげたりもしました。

ワークマンのベストに、
最初に派手なワッペンをつけたのは家人。?

そういえば、父の時もこうして針仕事をしたことがありました。母方の祖父が着ていたオーダーメイドのチェックのシャツ。上質な素材だったので父が譲り受けて着ていたのですが、さすがに袖口が擦り切れていました。

多分、50年以上、経っていたのではないでしょうか。袖口に茶色のパイピングをつけてリペアしたら、父はとても喜んでくれ、私と一緒に出かける時にもよく着ていました。

父が亡くなったとき、いつもの姿でいて欲しくて、そのシャツを着せて送り出しました。

このシャツを着て、父は旅立った。

滅多に針仕事はしないのですが、こうしてたまに針を持つと、いつも何かしら手仕事をしていた母のことを思い出します。

フランス刺繍や編み物。母の手作りの品は、今もたくさん残っていて、手に触れるたびに温かい気持ちになります。

針を動かしている時は、何も考えません。ただひと針、ひと針。果てしなく思えるような長い直線も、いつか終わりになります。

時間を刻むような、針仕事。

だからでしょうか。悲しい時、どうしようもない時、心乱れる時は、針仕事が気持ちを落ち着かせてくれるのは。

小さなことがとても心に染みる日々です。