なんとなく所在ない朝の処方箋ーー初めてのカフェへ

  1. Interior

なんとなく所在ない朝は、初めての場所へ行ってみる。

春や秋ならば、気の向くままに車を走らせて景色の良いところでピクニック、というのもいい。

でも、今は3月。雪解けのどんよりとした曇り空の下、この天気も気の晴れない理由かもしれない。

そんな時、私の処方箋はカフェに行くこと。馴染みのカフェもいいけれど、敢えて初めての場所に行ってみる。

今朝がまさにそうだった。

家は大好きだし、ここにいれば快適で心地よい。

でも、同じように時間が流れていくことが気鬱な時もあるのだ。

Googleマップで「カフェ 旭川」と探す。いくつか見て、とにかく出かけることにした。

車で20分。東川から14キロ。旭川市のそのコーヒースタンドは、小さくてその朝の気分にピッタリだった。

BARISTALTCOFFEE。

3種類のミルクから選べる、丁寧に淹れたカフェラテと、アボカドのサンドイッチを食べながら、カフェの人とおしゃべりする。

3ヶ月沖縄に住んでみたという女性の話が面白くて、おすすめのカフェや宿泊を聞く。

雄武町(小学校の時、この街から転校してきた子がいたことを不意に思い出した!)というオホーツクの町の、美味しいお寿司屋さんの話。

海が見える日の出岬のホテルの話。

早速、Googleマップに保存。

コーヒースタンドを出て、女性がおすすめしてくれた旭川のカフェに行ってみることにした。

車で5分だし。

カフェのハシゴなんて、いつ以来だろう。

ランプスタンドコーヒーは、古い煉瓦倉庫をリノベーションした空間で、とても広かった。

2階がこぢんまりとしていて、落ち着ける。

ここで古いkunel(クーネル)を見つけて、久しぶりに読む。

2020年だから、25年!?前の一冊で「料理上手の台所」。

料理家のケンタロウさんが載っていて、胸が痛くなる。

この頃、「ヴァンテーヌ」という女性誌で一緒に仕事をしていた。

ケンタロウさんが事故にあったのは、この5年くらい後だったろうか。

雑誌を買わなくなっても、クーネルだけはバックナンバーを集めたものだった。

東京の家にはだからたくさん残っている。

雑誌なのに古くならない稀有な空気感があって、それはとても貴重だった。

至誠と週末散歩に行く代々木上原に、お洒落な古本屋があり、そこで見つけては買っていた。

帰りに2人でカフェに寄って、思い思いに本を読むのも楽しみだった。

所在ない朝は、寂しいというのとも違う。淡々とながれていく平和な日常に、少し変化が欲しいと思うとき。

そんな時、初めてのカフェは、ちょっとだけ胸が高まる、小さな経験だ。