7days book cover Challenge 【5】「小さな家」

  1. Lifestyle

<5>  「小さな家」(ル・コルビュジエ) 「小さな森の家」(吉村順三)ーー「心地良い居場所」

7days book cover charengeでは、本の内容や批評を語らない、というのが約束。でも、選ぶにあたって、いろいろなことを考えたし、それはとりもなおさず、今の自分とこのコロナの状況を考えることにもなった。だから、7days book cover charengeが終った今、語ってみたいと思う。
7冊(実際には8冊になってしまったけれど)を選ぶにあたっては、まずテーマを考えた。本は私の生活の一部で、お風呂に入る時、ベッドのそば、リビングの一角に本がないということはない。8年前に自宅をリノベーションするときに、思い出のものや衣類、長年とっておいたものは思い切って処分したが、本だけはすべて残し、それを収納できることを優先したほどだ。だから、本の数はかなりある。その中から選ぶには、テーマが必要だと思ったのだ。
今回、テーマとして設定したのは「今、大切にしたいこと」。本のタイトルの後に、その大切にしたいことを書いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あるときセミナーで「お勧めの建築やインテリアの本を教えてください」という質問があった。そのとき、ふと浮かんだのがこの2冊だった。以前から、手元におき、折に触れて眺めていた本ではあったけれど、この2冊が私の「良い家」の基準になってることに、そのとき気づいた。


「小さな家」はル・コルビュジエが年老いた両親のためにレマン湖のほとりに建てた家。そして「小さな森の家」は、吉村順三が自分と家族のために建てた軽井沢の山荘である。


どちらも、タイトル通り、小さな家だ。人が心地よく暮らすための、最小限のスペースと最大限の豊かさ。ふたりの著名な建築家による家族のための住宅は、のちに名作と呼ばれるようになる。


かたや平家でかたや二階建て。湖のほとりと森の中。ある意味、対象的ではあるのだけれど、この二つの家には共通点がある。それは「心地よい居場所がたくさんある」ということ。「小さな家」の11mの窓際のダイニングスペース、庇の下のテラス、レマン湖の景色を切り取った壁の窓のそばのテーブル、雑草の生えた屋上、朝日の入るこじんまりとしたゲストルーム。「森の家」の木々を正面に眺めるソファ、一階のテラスの暖炉のそば、窓に向かった小さな仕事部屋、リビングを見下ろす三畳の和室、キッチンの一角の食事コーナー。


そして、こうして挙げてみるとわかる。心地良いスペースのほとんどは窓に面しているか、あるいは屋外であることに。


5月の東京は夏日になるというほど暖かく、風は爽やかで、本当に気持ちが良い。今、ベランダでこれを書きながら、目をあげるとシマトネリコの枝がさわさわと揺れている。


小さな家であるほど、周囲を含めた環境をどこまで住まいにできるか、が問われる。私の自宅は70平米のマンションだが、それとは別にベランダは12平米ある。ミラノのアパートメントはどこの部屋もテラスから緑が溢れるばかり。それに比べると、東京のマンションはテラスやベランダが放置されていることも多く、とてももったいないと思う。


長年、この2冊の家の中を幾度となく歩き回ってきた。平家好きの私としては、ル・コルビュジエの家の方が親しみやすいのだけど、木が大好きで木がないといられない性質なので、吉村順三の窓から森の見えるリビングは憧れだった。


ふとした出会いで、北海道の真ん中、大雪山のふもとにある東川町に家を建てることになった。森の中ではないが、田園と樹木に囲まれている。一年の半分は雪に埋もれる場所ではあるけれど、その冬の景色もまた、言葉を失うほど美しい。


ル・コルビュジエと吉村順三の小さな家に、なぜこれほど心惹かれるのかといえば、そのどちらも家族への愛に溢れているからだろう。年老いた両親が少しでも心地よく過ごせるように、家族が都会の忙しさから逃れて心の平穏を得られる場所をーーそう願ってつくられた家は、つつましく、優しい。

訪れて眺めることは難しいけれど、本の中でなら好きなだけそこで過ごすことができる。

STAY HOMEで「家にいる」今だからこそ、本当に心地良い居場所について考えてみてはどうだろう。

関連記事

基本設計ができるまで

東川プロジェクト【3】模型で見て、実寸で体験する。「下田さんのプラン、とりあえず模型作ったよ」と、建築家の森山さんに事務所で模型を見せてもらったのは、2019年…

  • 1625 view

7days book cover challenge 【4】…

<4日目>  「最後の昼餐」(宮脇檀 絵・根津りえ)ーー「生きること、食べること」7days book cover charengeでは、本の内容や批評…

  • 482 view

私が個人ブログをスタートした理由

唐突に思われるかもしれないけれど、個人ブログを立ち上げることにしました。理由は、書きたいことがあるから。モダンリビングのブログは、オフィシャルな…

  • 1805 view

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。