ロケ弁と朝焼け

  1. Family

おはよう、新しい1日。

何度も何度も夜中に目が覚め、気づくと窓の外がオレンジ色に染まっていました。早朝ロケや朝一番の飛行機で札幌に介護に通っていたの頃には、よく目にした景色だけれど、ずいぶん久しぶりのように思います。

曙の空に、至誠のことをただ祈った。


ロケ弁当。撮影に同行するときは、5.5合炊きの炊飯器で2回ご飯を炊き、40個のおむすびを作るのがいつものことでした。撮影中は食事をする暇もないスタッフに、コンビニのおむすびばかり食べさせたくない、と思ったのがロケ弁を作るようになったきっかけです。


前日の夜、お米を研いで炊飯器をセットするのも、朝、2度目のお米を炊くのも、いつからか至誠がやってくれるようになりました。


役目を終えると、またベッドに戻る至誠。朝食用に、ロケ弁の一部を取り分けて、至誠の朝食のトレイをつくります。それが、お手伝いのお駄賃でした。


至誠は、私が出かける時には必ず起きてきて、「ご苦労さん」と、いつも労ってくれ、朝早く送り出してくれました。


2時間かかるロケ弁作り。結構、大変ではありましたけれど、いつも、これが最後のロケ弁になるかもしれない、と思って作っていたような気がします。至誠が手伝ってくれたから、続けられたし、スタッフの笑顔がうれしかったからやめようと思ったことはありませんでした。


1冊の本で3回、ロケ弁を作ったとして、年間6冊で18回。13年間で234回。1回40個を作るとすると、9360個のおむすびを作ったことになります。

至誠は勢揃いしたおむすびを
いつも笑顔で見ていた。


秋になり、東川からも新米が届きました。炊飯器にお米を入れながら、そのたびに丁寧に浸水させてご飯を炊いていた至誠を思い出します。


日常の、ごく些細なことほど、記憶は消え難く、不意に立ち上ってきて、ドキリとさせられます。うれしくもあり、辛くもある記憶の数々。


けれど、それはまた、かけがえのない宝物です。
キッチンに立って料理をするーーその当たり前のことが、どんなに「特別なこと」か、、、、。


今日もまた、美しい青空が広がって、まさに撮影日和のよう。この空を至誠に届けたいーーだから、今日も私は散歩に行くのです。
Day4


冬の寒い最中でも、週末の散歩は
私たちの楽しみだった。