7days book cover challenge 【4】「最後の昼餐」

  1. Lifestyle

<4日目>  「最後の昼餐」(宮脇檀 絵・根津りえ)ーー「生きること、食べること」

7days book cover charengeでは、本の内容や批評を語らない、というのが約束。でも、選ぶにあたって、いろいろなことを考えたし、それはとりもなおさず、今の自分とこのコロナの状況を考えることにもなった。だから、7days book cover charengeが終った今、語ってみたいと思う。
7冊(実際には8冊になってしまったけれど)を選ぶにあたっては、まずテーマを考えた。本は私の生活の一部で、お風呂に入る時、ベッドのそば、リビングの一角に本がないということはない。8年前に自宅をリノベーションするときに、思い出のものや衣類、長年とっておいたものは思い切って処分したが、本だけはすべて残し、それを収納できることを優先したほどだ。だから、本の数はかなりある。その中から選ぶには、テーマが必要だと思ったのだ。
今回、テーマとして設定したのは「今、大切にしたいこと」。本のタイトルの後に、その大切にしたいことを書いた。

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<3>  「最後の昼餐」(宮脇檀 絵・根津りえ)ーー「生きること、食べること」

初めて宮脇檀さんの本を手にしたのは、1995年頃だったと思う。「日曜日の住居学」と題された文庫本は、何気に読んだ本だったが、話し言葉のような快活な文章と、建築や暮らしを我がこととして平易に語る内容に引き込まれた。当時、宮脇さんはたくさんの雑誌の連載を抱えていて、女性誌の編集者で建築門外漢の私でさえ、名前を聞いたことがある建築家だった。


2003年にモダンリビングの編集長になった時、多くの建築家の方に言われた。「モダンリビングと言えば、宮脇さんだよね」。


モダンリビングと宮脇さんの関わりは、1951年の創刊直後にさかのぼる。まだ学生だった宮脇さんは、アルバイトとして夜な夜な編集部に来ていた。まずは店屋物をとって腹ごしらえをして、仕事にかかる。編集部といっても、ひとつのフロアにいくつもの編集部が一緒に机を並べていて、モダンリビングの担当は数人。宮脇さんは使い走りから原稿書き、イラスト、編集作業まで覚えてしまう。初代編集長の渡辺曙は若い宮脇さんを可愛がり、人としてのあり方から仕事の向き合い方まで事細かに教えたという。


このあたりのことは、ご自身がエッセイの中に詳しく書いている。卒業し、設計事務所を構えてからは、建築家としてモダンリビングに関わり、誌面でのエッセイの連載は1998年に亡くなる直前まで続いた。


私は宮脇さんにお目にかかることはできなかった。お目にかかりたかった、としみじみ思う。ダンディでおしゃれだったと誰もが言う宮脇さん。暮らしから設計を考えた建築家だった。


宮脇さんは自分で台所に立ち、本格的に料理をした。この本は、屋外で食事をすることが大好きだった宮脇さんが、アウトドアリビングのあるマンションで料理の腕をふるう記録でもある。イラストは宮脇さんのパートナーだった根津りえさん。1996年にガンを発症。最悪の場合を想定した宮脇さんが最後にできることとして選んだのが、根津さんの書きためたイラストを一冊の本にまとめることだった。


イラストと共に美味しいものがふんだんに出てくる。宮脇さんは料理を楽しみ、外でワインを飲みながら食べることを楽しむ。ただただ幸せな時間の積み重ね。読んでいてそれが辛くなってくるのは、病気になってからの食卓である。あと何回食べられるかわからないーーけれど、宮脇さんは食べることを楽しみ続ける。


家にいる時間が長くなって、料理に向き合う人が増えている。今まであまりキッチンに立たなかった男性も料理を楽しんでいる。宮脇さんが見たら、「今ごろ、遅いんだよ!」と言って、にまっと笑うかもしれない。


ずっと昔、私が結婚して間もない頃、「明日、地球が終わるとしたら何をしているだろう」と考えたことがある。きっと、今日と変わらず家人とご飯を食べているのだろうなと思ったことを、今、唐突に思い出した。


ガンが消えて一時退院し、突然暖かくなった4月の日曜日。宮脇さんと根津さんは久しぶりにテラスで食事をする。桜が満開で、真っ白な雪柳と青い空、白い雲。蝶々の形のパスタ、サラダ、白ワイン。


「こういう時間をまた持てるようになったという状態が美味しい。 これが最後の昼餐であっても良いと本気で思った」
(「最後の昼餐」から抜粋)


宮脇さんは教えてくれた。

「食べること」の中に暮らしがあり、喜びがあり、そして愛があるのだと。

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