6月9日。4ヶ月ぶりの美術館でした。前日からワクワクしていました。
2月の半ばに、新しくなったアルチゾン美術館(旧ブリジストン美術館)に行って以来。アートに触れない日々は、心が乾いていくようでした。
東京都現代美術館https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/olafur-eliasson/のオラファー・エリアソン展「ときに川は橋となる」。
3月半ばのスタートを予定したままコロナで休館になり、もしやこのまま誰の目にも触れることなく会期が終わってしまうのでは、、、と心配していたのですが、見ることができて幸せ。
開期も9月27日まで延長に。
私がオラファー・エリアソンを初めて知ったのは、瀬戸内海の犬島でのことでした。
野原のような庭。
妹島和世さん設計の小さな家の中にあったいくつもの丸い鏡がその庭を互いに写し込んで、どこまでも庭が繋がっています。
その中に入ったとき、まるで別の世界に連れていかれたかのようでした。
Self-loopというタイトルのそのアートが、オラファー・エリアソンによるものだったのです。
そして去年。
オラファー・エリアソンという名前は、プロダクトデザイナーとして登場しました。
ルイス・ポールセンの新作、quasi(クワジ)をオラファーがデザイン。
プロダクトというより、ワークオブアートアートともいうべき作品で、昨年のミラノサローネ・ユーロルーチェの大きなトピックでした。
東京都現代美術館でのこの展示は、COVID-19の影響により、オラファー自身も来日することができず、アーティストが1度も自分で見ていないままに開幕するという前代未聞の展覧会となりました。
およそ3ヶ月ぶりにオープンした、東京都現代美術館は、静かにその時を待っていたようでした。
3月9日の初日には会場前から60人近くの人が、ソーシャルディスタンスをとって並んでいました。
会場に入ると、最初の入り口にオラファー自身の言葉による、この展覧会に寄せる思いが語られています。
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この展覧会「ときに川は橋となる」はサスティナブルな方法で展覧会をつくりあげるためのパイロットプロジェクトです。(中略)人々は日々、二酸化炭素を排出しながら生きています。たったひとりでできることには限りがあります。各国の政府機関や国際社会は今、気候変動問題に真剣に取り組むべきです。しかしその実現のために私たちは皆可能なレベルでそれぞれの分野から働きかけなければなりません。今こそ地球に代わって行動を起こすときです。
(オラファー・エリアソンの序文から抜粋)
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しかし、それ以降、それぞれの作品にはキャプションのプレートは一切見当たりません。
作品名は入口に置かれた、パンフレットに書かれているだけ。
まさにこれは体感するアートなのです。
現代アートはさまざまな捉え方が可能です。アーティストは私たちと同じ今の時代の空気を吸い、問題に向き合っています。
そこからアートを通して発せられる言葉をどう受け止めるのか。それこそがモダンアートの面白さ、深さだと私は思っています。
このオラファーの展示は本当に美しい。
その後にある意味よりもまず、美しいということが真っ先に心の中に飛び込んできます。
今この瞬間これを体感している自分とそのアートだけが存在し、それ以外のものが消えてしまったかのように感じるこの感覚。
久しくアートに触れることができず、遠ざかっていたからこそ、その感覚がいっそう敏感になっていたのかもしれません。
ベルリンのスタジオで、約90人のスタッフを要し、その中には建築家デザイナーグラフィックデザイナー…、ありとあらゆる職種の人が集うチーム・オラファー。毎日60人以上の人が一緒にスタジオで食事をするためのキッチンや屋上菜園もあり、そのレシピはThe kitchenという1冊の本にもなっています。
この本の中には、レシピだけではなく、チームオラファーの活動の日々が描かれています。
この本を見ているとこんな言葉を思い出します。
美しいものは美しい場所に生まれる。
人はパンのみでは生きていけない。「心を満たされること」がとても重要です。
美は心を満たすもの。
アートもまた、その存在は人にとってessential(必要不可欠なもの)なのだと思います。
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