人生の優先順位

  1. Family

夜のうちに雪が降ったらしく、木々は朝になると、うっすらと雪化粧していました。新雪はふかふかとして柔らかそうですが、厳寒期に比べると重く、もっちりとした感じです。昼間の温度はプラスになり、少しずつ春に近づいていることを感じます。

木々はうっすらと雪化粧していた。


窓から見える景色は1日として同じではないように、私たちの日々の繰り返しは同じようでいて、決して繰り返しではありません。


至誠の月命日の日、私は旭川に住む大叔母(母の叔母)に会いに行きました。2019年8月に父が亡くなった後、至誠と2人で行って以来ですから、2年半ぶりになります。日々の多忙さに紛れて、気がつくと電話をしたのも1年前のことでした。


電話に出てくれるだろうか。


恐る恐る携帯にかけると、以前と変わらないハキハキとした声が返ってきました。90歳をゆうに超えた大叔母は、いつも身だしなみよく、丁寧に暮らしていました。お寿司でもとってお昼を一緒に食べましょうとの言葉も大叔母らしく、私はケーキを買って大叔母の家に向かいました。


マンションにつき、何号室だったかなと郵便受けを確認した時、そこには別の方の名前が入っていました。慌てて大叔母に電話をすると、1年以上前に引っ越したことがわかりました。


幸い新しい住まいは、歩いていける近さでした。
大叔母は介護付きケアハウスに移っていました。施設の方にお聞きすると、当然ですが、面会はできないとのこと。持ってきたお菓子だけ渡してもうことにし、大叔母に電話でその旨を伝えました。


面会できないなんて、全く知らなかったわ、と大叔母。


杖もつかずに歩いて下に降りてきた大叔母と、ガラス越しに少しだけ顔を合わせることができました。ずいぶん小さくなってしまったけれど、今でも豊かな白髪は美しく、話すこともしっかりしています。何よりその施設が明るく清潔で、大叔母の顔が明るいことにほっとしました。


面会できるようになったらまた来るね、と言って、東川に家を建てたことを伝えました。

少し気持ちを落ち着けたくて、「珈琲亭ちろる」http://cafe-tirol.com/に行くことにしました。

父と母が結婚する前、よく通っていた喫茶店です。

経営者は変わっていますが、インテリアは昔の面影を残しています。ただ、アイビーに囲まれた中庭がなくなっていました。

コーヒーとリコッタパンケーキを頼みました。お茶って大事です。「ちろる」での時間が終わる頃には、大叔母との束の間の時間を前向きに受け止められるようになっていました。

フワフワッのリコッタパンケーキ。


今も変わらないクラシックな佇まい。


時間は待ってはくれないのだと、改めて思いました。気がついてよかった。今日、会えてよかった。



家に戻り、岐阜にいる義理の父に手紙を書きました。至誠の月命日には必ず書こうと決めています。


99歳になるおとうさんとこんなふうに文通を始めたのは、至誠が逝ってからのことです。お姉さんたちの、結花さんの手紙はうれしいと思うわ、という言葉に励まされて。


「おとうさん、今日は至誠の4回目の月命日です」。

東川の家にもレターセットを置いてある。


年老いた親戚に会うこと。手紙を書くこと。
日々、さまざまなことに追われ、後回しになりがちなこと。


けれど、そうしたことこそ、人生の中で優先順位が高いことなのかもしれません。


「今、しなくてはいけないこと」は、仕事だけではないのだと。


今朝も雪が降っています。静かに、1日が始まります。

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