今日、5月8日は、2年前に亡くなった父の90歳の誕生日。この日を一緒に迎えたかったと心から思う。
この写真は、2017年。一緒に上った札幌の藻岩山のレストランで。たった1度だけの藻岩山だった。
父は高いところから景色を眺めるのが好きで、だから、父と一緒によく高い場所へ行った。
札幌のホテルの回転する展望レストラン。札幌駅の上のスカイタワー。函館の五稜郭タワー。そして藻岩山。振り返ってみれば、いつもたった1度きりの時間だった。
あの時間、あの天気、あの会話。
新しくなった藻岩山の展望レストランは一度、行ってみたいと父が言っていたが、なかなかタイミングが合わず、この日、思い切って出かけたのだった。
当時、父はすでに酸素療法をしており、いつも「お供」と呼んでいた酸素ボンベを引っ張って歩く状態だった。ロープウェーとは言え、高所に登るのはかなり体力的にもきつかったのではないかと思う。けれども父は、どんな時も一言も辛いと言うことを口にしたことはなかった。
この日は運良く窓際のテーブルに座ることができた。キノコのスープパイ包み焼きを、おいしいおいしいと言って食べていた父を思い出す。
レストランの窓際で撮ったこの写真を、父はずっと自分のiPadの待ち受け画面にしていた。
時は刻々と過ぎていく。同じ瞬間は二度と巡ってこない。
だから、この時間を大切に。
今日を大切に。