〈1日目〉「生きる」(詩 谷川俊太郎、写真 松本美枝子)ーー「今という一瞬」
NYのアーティスト、Mariko Dozonoさんから7days book cover challenge のバトンを受け取った。この企画では、本の内容や批評を語らない、というのが約束。でも、選ぶにあたってはいろいろなことを考えたし、それはとりもなおさず、今の自分とこのコロナの状況を考えることにもなった。だから、7days book cover challenge で選んだ本について、ここで語ってみたいと思う。
7冊を選ぶにあたっては、まずテーマを考えた。本は私の生活の一部で、お風呂に入る時、ベッドのそば、リビングの一角に本がないということはない。8年前に自宅をリノベーションするときに、思い出のものや衣類、長年とっておいたものは思い切って処分したが、本だけはすべて残し、収納できることを優先したほどだ。だから、本の数はかなりある。その中から選ぶにはテーマが必要だと思ったのだ。
今回、テーマとして設定したのは「今、大切にしたいこと」。この特別な状況にあって、誰もがそのことを考えたのではないだろうか。かつて必要だと思っていたものは、外出しない日々の中では不要となり、その一方で、見落としていたものの価値に気づく。
本のタイトルの後に、この本から得られる「大切にしたいこと」を書いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<1> 「生きる」詩/谷川俊太郎 写真/松本美枝子ーー「今という一瞬」
母が癌になり、2週間に一度、札幌の実家に帰っていた頃、会社に行くのがたまらなく辛いことがあった。そんな日は表参道のショーゾーカフェに立ち寄り、15分か20分、カフェラテを飲みながら何も考えずに座っていた。そのカフェの本棚にこの本があった。
すぐに買い求め、自宅のベッドの傍らに置いた。朝、目が覚めて、どうしようもなく落ち込んだ気持ちの時は、声を出してこの詩を読んだ。
「生きているということ。今、生きているということ」という一行は、過去でも未来でもなく、この一瞬が大切なのだと思い出させてくれた。
母が亡くなった後、私は何度もセミナーでこの詩を朗読した。幸せの実感は、今に目を向けられるかどうかにある。暮らしとは、住まいとは、その繰り返しなのだと思う。
この本を手に取ると、母のことを思って泣いた日々が蘇ってくる。けれど、それは決して辛いだけの時間ではなかった。母を中心に、再び家族が一つになったかけがえのない時間だったということに気づくのだ。