43回目の結婚記念日ーー雪の中での「ライフ・イズ・マジック」

  1. Family

今日、3月12日は至誠と私の43回目の結婚記念日です。

この日は2人で旅に出ようと去年から決めています。

2人で いた時は、仕事の忙しさにかまけて、この日をやり過ごしてしまうことも少なくありませんでした。せいぜい食事に行くくらい。それも毎年ではなかった。

旅に出ることもできないわけではなかったと思います。

どうして、もっと2人の時間を大切にしなかったのだろうーーそんな思いから、旅に出ることにしたのです。

去年は初めて高速道路に乗って100キロ北に行きました。

そして今年は50キロほどですが、やはり北へ。

東川はスノードロップの花が咲き、すっかり春めいていますが、標高700メートルまで上がると、まだ冬の雪がちらついていました。

目の前に雄大な大雪山が見えることを期待していましたが、雲の向こうで全く見えません。

けれど、この雪景色はなぜかとても心安らぐものでした。

夕食までの間、私は至誠の書いた「ライフ・イズ・マジック」の本を読みました。

ほぼ日で連載していたものを、2003年にまとめたものです。

この頃の文章は明るくて軽く、ナポレオンズの芸風そのもののような笑いに満ちていて、私は思わず、くすっと笑ってしまいました。

ゆっくりとしたディナーの間、次のお皿が来るのを待ちながら、今度はサイトで、ほぼ日の連載の最後の頃を読んでいました。

白血病を発病し、9ヶ月の入院生活。その間も至誠は極力連載を休まず、病室で書き続けていました。

至誠らしく常に笑いを盛り込みながら。

けれど、白血病が再発し、臍帯血移植をして退院したものの、また入退院を繰り返すようになった頃には、読むのが辛いほど、至誠の切実な願いが伝わってきました。

元気になって普通の生活がしたい。

自宅療養をしている時にも「普通の暮らしって豊かだね」と言ったことがあります。

間遠になりながらも続けていた連載は、2021年の7月に終わりを迎えています。

その3ヶ月後、10月26日に至誠は逝ってしまいました。

気がつくと、あれから4年半が経ちます。そんなに長い時間が経ってしまったなんて、今でも信じられません。

東川の暮らしは、日々が豊かで、小さな幸せに満ち溢れているけれど、至誠を思い出すと、時間は全て凍りついたよう。

この4年半は、昨日から急に今日迎えたように思えます。

普段私は、日常の中で、心の奥の扉を開かないようにして暮らしています。今でもまだ解けない氷を抱えているのです。

それはきっとずっと変わらない。その氷を抱えていることに慣れていくしかない。

でも、こういう日にその扉を開けると、涙が止めどなく流れてきます。

至誠の書いたものを読んでいると、すぐ傍で至誠の声が聞こえます。

なめらかなあの声が大好きだった。

結婚式の時に撮った家族写真を眺めていました。両方の両親も私の祖母も、そして至誠もいなくなってしまって、残っているのは至誠のお姉さん2人と私だけです。

43年前のあの日。

なんて幸せな日だったのでしょうか?

1983年3月12日。至誠30歳、私23歳。

こうしてたくさんたくさん涙を流して、そしてまた明日から次に進んでいく。誰もがそうやって、日々を重ねていくのだと思います。

それでも、人は生きていかなくてはならないから。