緩やかな家族と共にーー小石を偲ぶ会

  1. Family

今日、小石を知る仲間の皆さんがバケラッタで「小石を偲ぶ会」を開催してくれました。

バケラッタでのパーティの時、小石はお料理チームに入れていただき、お手伝いをしていました。そのお料理チームの人たちが今日もたくさんおいしいものを作ってくれました。忙しい中、50人近くの方が集まってくださいました。


その時、私が皆さんの前でお話しさせていただいたことを、ここに書いておきたいと思います。


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皆様、今日は小石のために集まってくださり、本当にありがとうございます。少しお話をさせてください。


1つ目は「発信すること」についてです。
小石の白血病が分かった時、半年ほどの間はごく一部の人にしか病気のことを話しませんでした。けれど小石がほぼ日の連載に病気のことを書き、「もう話してもいいよ」と言ってくれました。


隠しごとはとても重いことです。病気のようなネガティブなことは、言わないことが多いと思います。けれどそれはとても苦しく、そのことでどんどん内にこもるようになってしまいます。私がブログに小石のことを書いたことで、たくさんの方が手を差し伸べてくれ、助けていただきました。私自身、書くことは生きることであり、救いでもありました。


2つ目は「家のこと」です。2019年の6月に東川の土地と出会い、家を建てることにしました。そのすぐ後で、10月に小石が白血病で入院しました。


その頃には家の基本設計が進んでいました。小石は無菌室で外との接触もできない状況でしたが、私たちにとって家のことを話し合い、模型を見、東川での暮らしを考えることはとても楽しく、夢のあることでした。家は「希望」なのだとその時、思いました。


東川の家は今年3月に竣工しましたが、小石は1度もその家を訪れることはできませんでした。けれど、私たちは最後まで東川の家に行こうね、と言い暮らしていました。


私は長く住宅に関わる仕事をしてきましたが、今改めて家とは何かということを知った気がします。コロナになって仕事の仕方が自由になり、どこに住むか、どう暮らすかを選べる時代になりました。家を建てるということは、どう生きるかを決めることなのだと思います。


3つ目は「家族のこと」です。2017年に母を、2019年に父を亡くしました。そして今年、至誠を。この5年間で、愛する家族が3人逝きました。


家族は共に暮らし、共に生きています。けれど介護や闘病を通して、家族はより一層家族になるのだと思います。


至誠が入院して数ヶ月でコロナになり、面会ができなくなりました。私たちの間ではFaceTimeが通じ合う唯一の方法でした。面会できれば会うということで満たされるところがあります。しかしFaceTimeでは言葉を通してしかコミニケーションができません。


食事の時はほとんどいつもFaceTimeで一緒にご飯を食べ、その後も話をしていました。普段あまり聞かなかった小石の仕事に対する考えやこれからのこと、本音の話をたくさんする機会がありました。


なくなる前の3ヶ月、小石は家で闘病していました。その頃はもう歩くこともあまりできないような状態でしたが、2人でベッドの上でオリンピックを見ていました。帯状疱疹の痛みもひどく辛い日々でした。

そんな中で痛みのない日があり、その時、小石がこう言ったのです。「痛くなくて、お腹がいっぱいで、そばに結花がいる。幸せって簡単なことだね」


その3カ月間に小石がいちばん口にしたのは、「結花ちゃん、そばに来て。手を握って」という言葉でした。


私の友人が教えてくれた忘れられない言葉があります。「あなたが何気なく生きた今日は、昨日亡くなった誰かが、どうしても生きたいと願った明日」。だから私は生きていかなければならない。


至誠は「もう結花の幸せだけが望みだ」と言ったけれど、至誠がいないのに幸せになれるわけがないと思います。けれど、いつも私を笑わせてくれた至誠だから、私は笑顔で東川の家で暮らしていこうと思います。


本日は本当にありがとうございました。

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「緩やかな家族」に囲まれて、至誠も私も幸せでした。


何度も涙ぐみ、何度もたくさんの人とハグした時間。1人じゃないんだ、と思った時間でした。


ありがとう。

ありがとう。

ありがとう。


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