「明日も来るからね」

  1. Family

最近、あまり長く眠れなくなりました。寝ても2時間起きくらいに目覚め、目覚ましが鳴る前に起きてしまいます。


今日のようなどんよりとした朝は、とても苦手。家にいると鬱々として時間が経ってしまうので、とにかく外に出ることにしています。


今朝もカタネカフェに来ました。10人入るともう満席の、小さなカフェ。1階はベーカリーで、カフェは地下。パリの小さなホテルの朝食室のイメージだそうです。


以前から至誠と、週末のランチによく来ていました。オーナーさんとも顔見知りで、言葉を交わすこともしばしば。今も至誠のことを心配して声をかけてくれます。

カタネカフェでの朝食。
焼きたてのパンの香りは、幸せの薫り。


お隣の雑貨屋さん、アコテも同じようなお付き合い。付かず離れずのこうしたご近所さんとの関係は、至誠が築いたものです。私はバタバタと忙しく、家にいる時間も少なかったので、至誠を通して生まれたお付き合いでした。至誠が入院してひとりで来るようになって、少しずつ馴染んできた感じがします。


至誠が一般病棟に移ってからは、ほとんど毎日、FaceTimeをするために病院に行っています。緊急事態宣言が開け、世の中は一気に日常が戻りつつありますが、病院の面会禁止は変わりません。


一般病棟の個室の場合、本人の管理のもと携帯やiPadを部屋に置けますし、いつでもFaceTimeできるのですが、至誠は今、自分で操作することはできません。看護師さんに操作してもらいます。iPadの管理もできないので、毎回、私が持参して持ち帰るということの繰り返し。私が病院に行かないと、FaceTimeできないのです。


完全防護をした看護師さんがずっと至誠の顔を写してくれています。ですから、話ができるのは10分程度。
至誠はその時によって、深く眠ったまま目を覚さないこともあります。そんな時でも、聞こえていると信じていろいろな話をします。岐阜のおねえさんたちのこと、友人たちのこと、東川の家のこと。そして私の仕事のこと。家で療養している時、至誠は私の仕事の話を聞きたがりました。社会とつながる実感が持てたからでしょうか。


昨日も仕事の話をしました。「これから横浜に取材に行くんだよ。セミナーのための動画収録で」


長くテレビの仕事も多かった至誠は、私のオンラインセミナーを見て、的確なアドバイスをしてくれたものです。私も仕事について話し合えることがとてもうれしかった。そして、そのアドバイスは、いつも私の気づかなかった側面についてでした。


インテリアショップの動画取材を高く評価してくれました。専門知識がある人が、見ている人たちが知りたいことをわかっていて伝える。それはタレントのレポーターには絶対できないことだ、と言って。


一般病棟の、ナースステーションの正面の個室。至誠は気管切開して喉に管を繋ぎ、人工呼吸器の助けを借りて息をしています。肺には薄くなりつつあるとはいえまだ白い影があり、声は出すことができません。栄養は鼻からのチューブで胃に供給されており、家にいた時よりは体重も増えました。


一昨日、病院に行ってFaceTimeした時は、最初は眠っていましたが、私の声で目を覚まし、しっかりとアイコンタクトしてくれました。問いかけるとイエスという意味で、瞼をぎゅっと閉じます。口も動かして、何かを言いたいのが伝わってきます。それだけで、至誠と意思の疎通が取れたことだけで、本当にうれしくて。FaceTime越しに、私は涙でぐちゃぐちゃになりました。


仕事をしていると、先の予定を決めていくことが必要です。実は、今はそれがとても苦しい。2週間先の予定を決めながら、その時、至誠は、、、と思ってしまう。


至誠のことを思わないときはありません。いつも私の一部にあります。それでも今、この瞬間だけを思えば、なんとか耐えられる。それだけに未来は、重いのです。


けれど、一瞬でもその現実を忘れさせてくれるのが「仕事」であるのも事実。仕事は、今の私にとって救いでもあります。


人生は喜びと辛さがあざなえる縄のように混在しています。日々の中にいくつかの側面を持っていると、その辛さも少し耐えやすくなるように思います。


今日もこれから病院へ。今日は目を開けてくれるだろうか。でも、目を開けてくれなくても、私が来たことはわかっているに違いない、、、。


「明日も来るからね。待っててね」


と言って、昨日、別れたのですから。

2020年8月10日の至誠。
去年の夏休み、東川の北の住まい設計社のカフェで。

ベランダのオレガノの花が咲いた。
なんて可憐な、、、。

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