愛しいとしか思えないーー自宅療養の日々

  1. Family


朝起きて、まずするのは、家人のバイタルチェック。体温計、パルスオキシメーター、血圧計、体重計は日常の友達。


熱がなければ、ホッとするけれど、家人は大抵、起きがけに微熱がある。汗腺が充分に育っていないため、体温調節がうまくできない。暑くても、寒くても、すぐに体温に反映する。だから、熱中症には特に用心している。


家人の今の状態を正確に表現するのは難しい。帯状疱疹の痛みはおさまり、皮膚も瘡蓋になってきた。白血病は毎週の血液検査で異常はなく、寛解状態を保つ。しかし、臍帯血移植後、半年しか経っていないため、免疫力は弱く、赤血球も白血球の数値も正常よりまだ低い。痰が絡みやすく、水を飲んでもむせてしまう。


帯状疱疹で2週間ほど寝たきりだったせいか、足腰がますます弱くなった。週に2回の訪問リハビリを受けているが、すぐには回復しない。


トイレはなんとか自分で行くことができるし、歯磨きもできる。だが、それ以外のことは、ほとんどすべて介助が必要だ。


どこに何を置いておいたらいいか、から始まり、熱がある時の冷やし方、嘔吐しそうな時の手当て、飲みやすいカップ、食べやすいカトラリー、小さめに切った素材のスープ、体温調節のためのブランケット、ご飯の時の座りやすい椅子とクッション、薬の収納、痛みを軽減するマッサージ、負担にならないお風呂の入り方、、、など、介護は小さな工夫の連続。少しでも楽に、快適に、と思い、片っ端からやってみる。

一段目は薬、二段目は塗り薬、
一番下は体温計や血圧計。
必要なものをきれいに収納する竹籠は、
ロケ弁に活躍していたもの。



セオリーもマニュアルもない。介護と向き合っている家族は、ひとりひとりがその場で工夫しているのだろう。


介護は特別なことに思えるかもしれないが、それは、暮らしの原点にも通じることという気がする。
どうすれば美しく、使いやすく、心地よいかーーその基本は、暮らしも介護も変わらない。


家人がほとんど歩くことができない状態で退院することになった時、ずっとリビングで過ごせるようにと部屋の模様替えをした。


ソファがあった場所に家人のベッドを置き、その向かい側にソファを移した。シェーズロングは元の家人の部屋に移動した。ベッドのマットレスはかなり傷んでいたので、シモンズのマットレスに買い変えた。ベッドとしては一般より少し高めだが、その分、弱った脚でも立ち上がりやすい。


家人のベッドからは、ベランダ越しの外の景色もテレビもよく見える。キッチンとも近いので、いつも目に入る。


コロナ禍だから、こうしていつもそばにいられるが、以前の勤務状態なら考えられなかっただろう。もう少し落ち着けば、私が短い外出をしても1人で大丈夫だと思うけれど、今はまだ、不安のほうが大きい。先日、展示会のために2時間ほど外出したのだが、その間に家人は郵便局の書留郵便を受け取りに玄関まで出なくてはならず、そのうえ、急にお腹が痛くなって、、、と、私が帰宅してみたら疲れはてて熱を出してしまっていた。


母も父も介護したが、配偶者の場合は、距離感も気持ちも全く違う。


体の自由がきかなくなって、家人はとても甘えん坊になった。寝る時もそばで手を握っていると、安心して眠る。


今はただ、愛しいとしか思えない。

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